私の体は音楽と映画と旅でできている

タイトルのまんまのブログ。中年主婦が映画、音楽、旅行について思いつくままに書いてます。

【映画評】幻の映画『MISHIMA』

原題:『Mishima: A Life In Four Chapters』。
製作:フランシス・フォード・コッポラ
ジョージ・ルーカス
監督:ポール・シュレイダー


日本とアメリカ合衆国の合作で、三島由紀夫の生涯とその文学作品を題材にした伝記風の芸術映画。
「美」「芸術」「行動」「文武両道」の4つのチャプターから成り、第1部「美(beauty)」には『金閣寺(Temple of the Golden Pavilion)』、第2部「芸術(art)」には『鏡子の家(Kyoko's House)』、第3部「行動(action)」には『奔馬(Runaway Horses)』(『豊饒の海』第二巻)の三島文学をダイジェストで映像化した3部のそれぞれに、三島が自決した当日の起床からの経過を追ったカラーのドキュメンタリー調の「1970年11月25日」のシークエンスと、三島の幼少期から「楯の会」結成までの半生をモノクロームで描いた「フラッシュバック(回想)」のシークエンスを交えた展開となっている。
Wikipediaより転載)


f:id:kiaralovesharp:20190321221951j:image

30年ほど前にレンタル屋の片隅にあったのを借りて見たきりだったんですが、この度、知人がアメリカから取り寄せたDVDを貸していただき、再見する事ができました。

昔、観た時はピンと来なかったのですが、今、観ると美術、映像、キャスト、音楽、全てにおいてスゴい作品だと再認識いたしました。
特に、劇中劇の部分はまるで舞台のようなセットで現実世界との差別化を図ってるんですが、所見時はなんやこれ?とついていけなかったのが、今は美しいと思えるから不思議です。

三島役が緒形拳であと、永島敏行、佐藤浩市が出ていた事くらいしか記憶になかったのですが、『鏡子の家』に沢田研二が出てたんですね。
今は観る影ありませんが、この時はまだ美しいです。
濃密なエロティシズムを醸し出す一編で、破滅の美学が見てとれます。

当初は劇場公開されるはずだったのが、三島の遺族に許可されず、DVDも日本では発売禁止となっています。
三島の同性愛の部分がクローズアップされているからというのもありますが、同性愛のシーンは今見ると大したことなく、事実の改竄があるとか、そういう事らしいです。

仮面の告白』『禁色』も読みましたが、今こそ映画化して欲しい作品です。

DVDにはドキュメンタリーも収録されてましたが、舞台に出たり、写真集を出したり、相当なナルシーでこのあたりは石原慎太郎と被るのですが、三島はもっと破滅型というか、純粋な狂気を感じました。

自衛隊にまで罵倒され、絶望から切腹による死を選ぶわけですが、あのまま逮捕されて日本中から嘲笑されるよりは潔く死にゆく事で自分なりの美学を完成させたのでしょう。
おかげで世界中の人々の脳裏に刻み付けられましたね。

ドキュメンタリーで美輪明宏が『あまりにも彼らしい最期だなと思った。しかし、私はあえて長生きして老醜を晒して欲しかった』と言ってたのが印象的でした。