カラヴァッジオ
カラヴァッジオ Caravaggio (86・英)
製作:サラ・ラドクリフ
監督・脚本:デレク・ジャーマン
ナイジェル・テリー/ショーン・ビーン/ゲイリー・クーパー/デクスクー・フレッチャー/ノーム・アルマ /スペンサー・レイ/ティルダ・スウィントン
年末、天王寺あべのハルカスでカラヴァッジョ展が開催されるのでデレク・ジャーマン監督による『カラヴァッジオ』を紹介します。
イタリア・ルネッサンスの時代もっとも異端に生きた画家カラヴァッジオの生涯をジャーマン 独特の斬新なタッチで描いた作品。
トスカーナ地方のポルト・エルコーレの簡素な部屋に横たわり、死を待っているミケランジェロ・メリン・カラヴァッジオ。
その脳裏を、さまぎまな思い出が去来する。
絵の天才少年カラヴァッジオは、ローマに移り住み、道端で絵を売りながら、わずかな収入で食いつないでいたが、枢機卿デル・モンテが、彼の描いた酒神バッカスの絵に魅せられ、 自分の館にカラヴァッジオを引きとる。
枢機卿の庇護のもとにカラヴァッジオは絵画の腕を研き、 ロ一マの聖ルイ・フランス教会から公式の作品依頼を受ける。
彼はラヌッツオという美しい若者に魅せられ、モデルにするが、彼の恋人レナとも関係を結び、奇妙な三角関係が生じ、それはやがて殺人へと発展してしまうのだった。
ラヌッツオを演じるは『ロード・オブ・ザ・リング』のショーン・ビーン。レナはデレク・ジャーマンの常連女優ティルダ・スウィントン。
ルネッサンス時代が舞台とはいえ、セットや小道具、衣装には凝らず、低予算映画 だというのがよくわかる。完璧主義者で細かな所にまでこだわり、時代を映し出すヴィスコンティ とは対称的。
ルネッサンス時代の衣装と違うぞ~、とか思ってしまうのだが、挙句、カード電卓 や雑誌までが登場します。ジャーマン映画に慣れた者でないととまどって しまうこと必至。
また、光の効果”を用いる手法は、カラヴァッジオによってはじめて絵画に試みられたものだが、 映像美にこだわるデレク・ジャーマンはカラヴァッジオのスキャンダルな生き様のみならず その特異な芸術性にも惹きつけられてやまなかったのでしょう。
80年代は彼の絵もデレク・ジャーマンの良さも理解できませんでしたが、イタリアに頻繁に行くようになって彼の絵の良さがわかるようになりました。
放蕩の画家カラヴァッジオは、男娼や娼婦、浮浪者などをモデルに聖人やマリア様を 描いているのでラファエロの宗教画と比べるとどこか生々しくかつダイナミズムを感じさせます。ローマの教会には『聖マタイの召命』をテーマとした壁画がさりげなく飾られていますが、こんな何億もの価値のあるものがよく盗難にも遭わないなと感心しますが、おそらくそれなりのセキュリティーが導入されているんでしょうね。
私の一番のお気に入り『エジプトの逃避途上での休息』
カラヴァッジオの割に優しい癒し系の絵です。