私の体は音楽と映画と旅でできている

タイトルのまんまのブログ。中年主婦が映画、音楽、旅行について思いつくままに書いてます。

【書評】ストア哲学入門

Kindle unlimitedは、月千円程度で指定の電子書籍が読み放題というサービスです。
もちろん、指定というだけあって旬の本とかあまり高い本は入っていませんが、マニュアル本などは役に立ちますね。

最近DLしたのが『ストア派 哲学入門』
哲学というと何か小難しい事が書かれているように思われがちですが、人生を生きる上での指針みたいなのが書かれていて、勇気づけられます。

ストア派というのは古代の哲学の流派で西洋で広く語り継がれてきた倫理です。


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現在の人は「ストイック」という語源からストア派に『禁欲的で感情を抑制する』といったイメージを抱いていますが、ストア派とは本来もっと情熱的なもので人生の試練を切り抜けるのに必要な強さと活力を与えてくれるものらしいです。

 

プラトンは哲学者が政治を担うのが理想としましたが、それが歴史上ただ一回実現したのがマルクス・アウレリウスの時代でした。

ローマ帝国が最も幸福に包まれたと言われた五賢帝時代の最後飾るに相応しい高貴な人物でしたが、多忙な政務をこなしながら、その合間に頭に浮かぶ哲学的思索をギリシア語に書き留める習慣があり、それをまとめたのが『自省録』という本で、私は時々この本を開いて、気に入った言葉に線を入れています。

 

わかりやすく言葉で書かれているものもありますが、漠然としていて何の事を言っているのかわからない部分もありますが、このストア派 哲学入門』はわかりやすく解説してくれています。

例えば 『衝動に流されてはならない。あらゆる衝動を正義に照らして判断し、どんな物事も曇りのない目でしかと把握せよ』 マルクス・アウレリウス『自省録』

 

の解説ではちょっとしたことで有頂天になるかと思えば、またすぐにどん底まで落ち込む。 要するに浮き沈みの激しい人だ。そういうタイプの人がいるとうんざりし、もう少し落ち着いて行動できないのだろうかと思ってしまう。
しかし、そうしたフィルターはストア派の思想に照らし合わせると「どんな種類の衝動に襲われようが、飼い犬をしつけるようにそれをコントロールするのが人間の務めである」 もっと短く言えば「冷静に考えてから行動せよ」 となります。

『ある物事について、何も意見を持たず、心を悩ませないことは可能だ。物事自体が我々の判断を形成するわけではないからである』 マルクス・アウレリウス『自省録』

 

様々な苛立たしい事態について「もし、それを知らなかったら?」と仮定する。 陰で言われているかもしれない悪口、気づかないうちに犯したかもしれないミス、知らないうちに亡くしたもの、それらについて何も思いようがない。
そもそも知らないのだから。 つまり、ネガティブな事について何も考えないのは可能だという事です。
世の中には嫌なニュースが氾濫しているけど、知らぬが仏という言葉があるように知らなければ腹が立つ事もないですよね。しかし、一方で知らない事は罪という言葉もあります。
その線引きが難しいですね。マルクス・アウレリウスは皇帝だから、帝国内で起こっているあらゆる事象に通じていなければならず、その矛盾に苦しんだ事でしょう。

しかし、防衛線のゲルマン人の侵入などについては真剣に考えなければなりませんが、くだらない人間関係に煩わされない為に、その手の事をシャットアウトするにには確かに有効ですね。

とまあ、このような引用と解説が山ほど書かれているわけですが、哲学って奥が深いですね。
「なるほど!」と目から鱗が落ちるような事もあれば、「そこは違うんじゃないの?」と思うケースもあるから面白い。 結局、人間って2千年前からほとんど変わってないという事に気づかされます。