私の体は音楽と映画と旅でできている

タイトルのまんまのブログ。中年主婦が映画、音楽、旅行について思いつくままに書いてます。

【英国映画紹介】ウェールズの山

監督:クリストファー・マンジェ
出演:ヒュー・グラント/コルム・ミーニー/タラ・フィッツジェラルド

第一次大戦時のウェールズ、英国から2人の測量技師がウェールズの山を地図に載せる為にやって来る。彼らはウェールズの住民が誇りに思う山"フィノン・ガルウ"を規定の305メートルに6メートル足りないと"丘"と診断してしまう。オイラ達の大事な"フィノン・ガルウ"が丘だなんて許せん、それなら山にしてやろうじゃないか、と村人が一致団結して土を積み上げ始めるが・・。

 

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原題は"丘に登って山から降りた英国人"(The Englishman Who Went up a Hill but Came down a Mountain
どこか寓話的な赴きのあるユーモア溢れるこの作品は実は私のNo.1英国映画。
ウェールズ人は元々ケルト人。イングランド人とは違って、情緒的でケンカっぱやい。そして何かというとイングランドに対して対抗意識を燃やしています。

私は行ってませんが、フュノン・ガルウは、イングランドからウェールズ南部に来た者達が最初に出くわす山であり、村人達にとってイングランドと自分達を分かつ上で単に地理的な意味を越えたウェールズ魂を象徴する山なのだそうです。


このナショナリズムは東京に対する関西人のそれ以上ではないかと思えるほどで、ヒュー・グラント扮する英国人が測量をしている間、パブの客が山の高さ当ての賭けをするのですが、教師が山の高さを299メートルと予想するとパブの主人が「305メートル以下は認めん、お前は英国人の手先か」と言ったり、その教師が山に土を積むのに協力しなかったりすると「売国奴」呼ばわり。

また、測量技師達の車を牧師がパンクさせたり、汽車は来ないと嘘を言ったり村ぐるみで測量技師達がロンドンに帰るのを妨害する様は、悲しくもおかしくて憎めないのです。

英国人達が足止めを食っている間、村人達はせっせせっせと"丘"に土を積み上げるのですが、その間雨が降って土が流れたり、反目し合う放蕩者と牧師さんが和解したり、ヒュー・グラントと地元女性との間にロマンスが生まれたり、様々なドラマが展開するわけですが、再び測量して山と認めた彼はその上で結婚を決意。
"丘に登って山から降りた英国人"とは彼の事だったのです。

 

このウソのような話は実話らしく、ラストでは彼らの子孫が登場します。
そして「長い年月の末、風雨にさらされ、再び山は丘に戻ってしまった」と聞くと彼らは再び土を山に積み始めるのですが、そこには老いも若きもパンク少年までが混じっていたのがおかしいやら微笑ましいやら。

山国に住む私にしたら、自分の土地の起伏が丘であろうと山であろうとどうでも良く、むしろ低い丘陵がどこまでも続く英国の田園風景や、アメリカのパノラマ的な風景に憧れを抱いてしまうわけですが、こういう郷土愛は見習いたいものですね。


The Englishman Who Went Up a Hill But Came Down a Mountain (1995) Official Trailer 1 - Movie