私の体は音楽と映画と旅でできている

タイトルのまんまのブログ。中年主婦が映画、音楽、旅行について思いつくままに書いてます。

ボヘミアン・ラプソディー

ボヘミアン・ラプソディー』がゴールデン・グローブ賞の最優秀作品賞と主演男優賞の2冠に輝きました。
公開時、一体誰がこのような快挙を予想したでしょうか。
あまりにも感動しすぎてなかなか自分の考えがまとめられなかったのですが、6回も見たことですし、これを機に感想をまとめてみたいと思います。


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クイーンの劇映画が公開されると知った時、リアル世代の中年以降の人間の間で盛り上がるのが関の山と思ってました。
上映期間もそれほど長くないだろうと想定して上映1週目、湯布院のハープ発表会に参加した後、フェリーで戻ってきたその日にTOHOシネマズ梅田で朝一の回を観ました。
朝早いから空いているだろうと高をくくっていたら、会場は70%くらい席が埋まっていて、平日ということもあって中年以上の男女で占められていました。
 
まず、オープニングがすごい。
20世紀FOXのロゴに被さるいつものBGM、これがギターなんですが、実際にブライアン・メイが弾いているとのこと。
そして、冒頭でライブ・エイドの映像が映し出され、嫌が応でもテンションが高まります。
ライブ・エイド、リアル世代の私、当時はDVDレコーダーで長時間録画などなくVHSで録画して6時間経ったら交換、寝る前に新しいテープをセットして6時間後に起きてまた交換という事を繰り返していました。ところが、当時は衛星技術が未熟だったせいもあり、曲の途中でぶちっと切れて突如スタジオに戻ったり、邦楽のアーティストのライブが流れたり、ストレス溜まりまくりだったのを覚えています。

しかし、デヴィッド・ボウイDURAN DURANなど当時日本でも人気があるアーティストはしっかり押さえていて、当然QUEENもそうだったわけですが、QUEENが映った時には既に『RADIO GAGA』だったと記憶しています。
そんなこんなで、後でライブエイドのDVDを購入して完全版を観ることができました。
こういう背景もあって、冒頭からノスタルジーで一杯になったところで、すーーっと映画の世界観に入っていくわけですね。

時代は遡って1970年、若者フレディは保守的な家庭に育った移民の子で、空港で働きながらお気に入りのライブに通っている。そのバンドのボーカリストが脱退して自分を売り込み、やがてそのバンドSmileはQUEENと改名。
車を売ってレコーディングを開始。それがレコード会社の目に留まり、やがて『キラー・クイーン』のヒットが生まれます。日本では空港に2000人のファンが詰めかけたということですが、これを仕掛けたのがMUSIC LILEの東郷かおる子さん。
しかし、映画での日本公演のシーンは一瞬。どの曲もそうですが、本人たちは少なくとも1番は演奏したらしく、それが一瞬ではエキストラも本人たちも気の毒というものですね。

『キラー・クイーン』の後はそれ以上のものをと求められ、農場に籠ってアルバム作りをしますが、実際は農場ではレコーディングのリハーサルだけをしたらしいです。でも、確かに何もなければ集中して曲作りができそうな気がしますね
ボヘミアン・ラプソディ』のレコーディング・シーンは圧巻でやはり一番の見せ場でしょう。
何度も「ガリレオ!」のフレーズをロジャーが何度も歌わされるところが面白いですね。
声を処理していたんじゃないんですね。私はこの曲を中学校の頃に初めて聴いてぶっとびましたが、製作過程までは知らなかったので、興味深かったです。コアなファンも実際にレコーディング風景が再現されて楽しかったと言ってました。
しかし、こうして一生懸命作った曲も長すぎるからとレコード会社にシングルカットを拒否され、自分たちでラジオに持っていく。
このわからずやの社長を演じているのは『オースティン・パワーズ』のマイク・マイヤーズなんですが、後でキャストをネットで調べて彼の名前を確認した時も一体どこに出てたんだと思いました。

そして世間の不評もものともせず、『ボヘミアン・ラプソディ』は大ヒット。
フレディ自身は愛する恋人もいて公私共に充実した日々を送ります。
彼らは世界的なバンドへと育っていくわけですが、それにつれて、仲間との軋轢や親しい人間の裏切りなどバンドに付き物の負の連鎖が彼らを襲います。
ソロ活動をするというフレディに対し、「空港で拾ってやったのに」というロジャーの売り言葉に対し、「俺が入らなければ、お前は週末にブルースを弾くくらいだし、ブライアンは誰も読まない天文学の論文を書いていただろう」と切り返す始末。実際はここまでは言ってなかったろうけど、ブライアン・メイ本人がこのセリフを残す事を希望したそうです。

個人的には特に激する事もなく、常に冷静なジョン・ディーコンが一番のお気に入りです。
3人が争っている時にその場をうまく収める名人でなかなか好感持てました。
演じているのはジョー・マゼロ。あの『ジュラシック・パーク』の子役と知ったのは家に帰ってからのこと。
FBの某グループでこれを指摘すると「驚きました」という反応が。
レオみたいに継続的に見ていると変化に驚きませんが、しばらく見てないとその変化に驚かされますね。
彼はインスタで色々貴重な写真をUPしていて好感が持てますね。
もし、ジュラパ時代にスマホがあれば、撮影風景とかUPしまくってたろうなあ。

こうして様々な葛藤を乗り越え、彼らがライブエイドという世紀のイベントへとばく進していく様は非常にドラマチックです。
マイアミ・ビーチに「また次もあるから出演の返事は急がなくてもいい」と言うのに対し、「もし、時間がないとしたら?」
そして、フレディは練習の時に自分がエイズに冒されていることを打ち明けます。
このあたりの時系列の違いはよく指摘されていますが、エイズに冒された身体でライブエイドに挑むフレディ、そして彼を温かく見守るメンバー達、という図式が映画らしくていいんですよね。
こう考えるとクライマックスをライブエイドに持ってきたのは正解だったと思います。

そして、あのラスト20分はずっと泣きっぱなし、ラミ・マレックによるフレディのパフォーマンスの完璧なコピーはもう鳥肌ものでした。
ちなみにこのシーンは空軍基地にセットを組んで撮影されたそうですが、観客席は合成でyoutubeに舞台以外何もない映像が流出してて笑えます。

欲を言えば、フィナーレの「Do they not its X'mas?」のシーンも再現して欲しかった。
冒頭に出てきたU2のそっくりさんにも歌ってもらったりして。
登場人物が多いから難しいだろうけど、合成という手があるでしょ。

さて、この映画を語るのにフレディのセクシャリティに触れないわけにはいきません。
実際はメアリーと出会う前に既に男の恋人がいたらしく、本命だけでも10人前後の相手がいたとか。
しかし、彼らを全て登場させたら収拾がつかなくなってしまうし、共感も湧かないでしょうから、3人を中心に描いたのは良かったと思います。

私が特に気になったのは晩年の恋人になったジム・ハットンではなく、彼のマネージャーのポール・プレンターの存在です。
実際彼はフレディと8年も付き合っていたらしく、彼自身もフレディの少し前にエイズで亡くなっています。
映画ではフレディに自分の方に誘導したり、ジョン・リードを罠にはめたり、メアリーやマイアミ・ビーチの電話を取り次がなかったり、史実ではいくらなんでもここまではしないだろうと思うほどの嫌な奴ぶりでファンの間でも「映画観るまで彼の事忘れていたのに」というほどの憎まれ役ですが、寂しがりやのフレディのそばに常にいて、フレディの望む事は何でもしてやり、常にフレディをそれこそ女王のように崇めていたのがわかります。

また、彼の「孤独がどういうものか俺も知っている。北アイルランドカソリックでゲイがどういうものかわかるか。俺の親父は俺の事を認めるくらいなら俺の死を望むだろう」というセリフが切ないんですよね。
北アイルランドプロテスタントが多く、カソリックはマイノリティ。そしてそのカソリックの中でゲイとして生きるのは大変だったと思います。フレディも移民の子でゲイ。同じ二重苦を背負った者同士通じるものがあったのでしょう。
しかし、どうしても打算とか付きまとって、ああなってしまったのでしょうね。
ジム・ハットンみたいに音楽業界について何も知らない人の方がかえっていいのかもしれません。
ちなみにこのポールを演じているのは『ダウントン・アビー』で貴族のお嬢様と恋に落ちるアイルランド人運転手を演じたアレン・リーチで、やはりあまりにも違うので家に帰ってキャスト確認するまで気がつかなかったほどです。
ちなみに彼はダブリン出身の生粋のアイリッシュ。おお、U2と同郷やんと思うのはおそらく私だけでしょう。

最後に各キャストについて
ラミ・マレックは正直一番本人に似ていません。
しかし、彼のパフォーマンスはまるでフレディが乗り移ったと思うくらい完璧で、また私たちの知らないフレディのコンプレックス、繊細なところなどうまく演じていたと思います。
社長の前で次の構想を語る時の自身満々な態度、そして「ボヘミアン・ラプソディ」を否定されても絶対に譲らないという頑固さ。パーティでの弾けっぷり。あれはフレディがフレディを演じているんですね。
しかし、そんな自信たっぷりの彼がふと素顔を見せるときがあります。それがまたうまい。

例えば曲を作っている時にポールに見つめられ、落ち着かないでいるさまとか、メアリーに妊娠を告げられてショックを受けるさま、などなど。
ゴールデン・グローブ賞の審査員はそういう点を評価したのだと思います。

ブライアン・メイ役のグウィレム・リーは一番本人に似ていますね。
写真を並べるとどちらがどちらかわからないほど、説教臭いところが学者らしくて良かったです。。
ロジャー役のベン・ハーディはひたすら可愛かったですが、ドラムのパフォーマンスは迫力ありましたね。
フランケンシュタイン誕生秘話を描いた『メアリーの総て』では吸血鬼の原案者医師ポリドリを演じてましたが、ふっくらしていておそらく指摘されなければわからないでしょう。
ブライアンとロジャーの2人はこの映画の監修を務めたそうですが、本人達を目の前にしてその役を演じるのはやりにくくなかったのかと心配してしまいます。
そして、私の一番のお気に入りは先にも書いたジョン・ディーコン役のジョー・マゼロで、コアなQUEENファンも彼が一番良かったと言ってます。
気になるのはジョン・ディーコン自身のこの映画に関するコメントがない事。フレディと一番仲が良かったから改ざんされるのが嫌だったのではないかという噂もありますが、実際はどうなんでしょう。

こちらに彼のインタビューがあります。映画では気付かなかったけど、なかなかのイケメンですね。

 


『ボヘミアン・ラプソディ』ジョン役ジョー・マッゼロ

インタビュー

 

アカデミー賞にも確実にノミネートされるでしょうし、まだこのブームは続くでしょう。

私も上映終了までにもう一度観に行きたいと思います。