私の体は音楽と映画と旅でできている

タイトルのまんまのブログ。中年主婦が映画、音楽、旅行について思いつくままに書いてます。

【オールタイムベスト】ライトスタッフ

監督・脚本:フィリップ・カウフマン
原作:トム・ウルフ
出演:サム・シェパードエド・ハリス/スコット・グレン/デニス・クエイドジェフ・ゴールドブラムランス・ヘンリクセン

 

もうじき、初めてアポロで月面に着陸したルイ・アームストロングの映画『ファースト・マン』が公開されますが、今から35年も前に宇宙に挑んだ男たちを描いた作品があった事をご存知でしょうか?

79年に発表され、世界的なベストセラーとなったT・ウルフの「ザ・ライト・スタッフ」の映画化で、40年代後半に初めて音速の壁を破ったチヤック・イエーガー、50年代末にマーキュリー計画の飛行士に選ばれた7人の男達とその家族との生活、友情、葛藤、家族などを描いたもので、当時すごく感動したのを覚えています。


この映画の主人公の一人、チャック・イエーガー准将本人がテクニカル・コンサルタントを担当。

「ライト・スタッフ」とは「正しい資質」を意味し、アメリカ初の有人ロケットに乗り込んだ宇宙飛行士達の実話を元にし、ヒーローとしての宇宙飛行士だけでなく、彼らの苦悩にも焦点を当てている所に共感を感じます。

 

この映画の面白い所は、7人の宇宙飛行士の描き方もさることながら、もう一人の英雄、世界で初めて音速を超えたテスト・パイロット、チャック・イエーガーにも焦点を当て、同時進行で描き出す事によって、華やかなスポット・ライトのまっただ中にいる宇宙飛行士とモルモットになるのは嫌だと宇宙飛行士になるのを拒否し、次第に世間から忘れ去られていったかつての英雄とを対比させた所です。

 

ラスト近く、宇宙飛行士を招いての華やかなる晩餐会が行われている頃、成層圏に向けてジェット機を飛ばすイエーガー、しかし失速してきりもみ状態に陥ってしまう。かろうじて脱出して地平線の彼方から現れた彼の表情は妙にすがすがしく何か吹っ切れたものを感じます。イエーガー役のサム・シェパードが出色。

また、宇宙飛行士の一人ゴードン・クーパー役のデニス・クエイドもいい。この手の顔って私のタイプではないはずなんですがなぜかデニス・クエイドは好きなんですよね。インタビュアーの「あなたのベスト・パイロットは?」という質問にすかさず「目の前にいるよ」と答えるゴードン。狭いカプセルに閉じこめられる訓練でも平然とし、発射寸前のロケットで眠りこけてしまう太っ腹な所がいいんです。

7人の宇宙飛行士の主役は誰かというとまぎれもなくこの人でしょう。

 

「1963年5月のあの輝ける日、ゴードン・クーパーはどこまでも空を駆け昇り地球を22周単独飛行した最後のアメリカ人となった。つかの間の一瞬、彼は文字どおり世界最高のパイロットとなった」というラストのナレーション。それにかぶさるビル・コンティの勇ましいスコアが印象的。

 

冷戦真っ只中の頃に作られた映画であり、時折ソ連との対抗意識みたいなのがあからさまに出てくるけど、それも時代を照射していると見れば貴重な映画であり、宇宙開発期の知られざる危険飛行の実態を捉えたアメリカ宇宙航空史という視点で見ても楽しめる。

 

そうそう宇宙飛行士の一人を演じているエド・ハリスは「アポロ13」にも出てるんですね。

女が現実的な事柄に煩わされている時でも、男はいつまでも少年の様に瞳を輝かせて遠くの世界を見つめていて欲しいと思わされる映画だったけど現実問題として、テストパイロットの夫はちょっと困るなあと実感致しました(笑)。

 

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